転勤を拒否できる?過去の実例を紹介

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転勤の辞令は拒否できるのでしょうか?

転勤の可能性を承知済みで入社した方も、数年で家族の事情など転勤できない理由が生まれる可能性もあります。

そもそも、転勤の辞令が出る前に本人の意思の確認や打診があるものです。

転勤を拒否したい場合は辞令が出る前の段階で上司に働かけるなど手立てがありますが、中には本人の状況や気持ちが尊重されないケースも…。

どんな場合なら正当に転勤を拒否できるのでしょう?

過去の辞令をもとに、転勤を拒否できるボーダーラインはあるのか調査しました。

転勤が就業規則に明記されている場合は拒否できない

前提となるのは、転勤が就業規則に明記されている場合は転勤は拒否できないということ。

就業規則に承諾して入社しますので、転勤を拒否するのは就業規則違反として懲戒処分や解雇の理由になります。

ただし、以下のケースは転勤を命じることが違法となるので転勤を拒否できる正当な理由になる場合もあります。

  • 転勤を命じる業務上の必要性がない場合
  • 転勤命令が不当な目的な場合
  • 転勤による労働者の不利益が著しい場合

具体的にどのような場合が転勤を拒否できる・できないのか、過去の実例を確認します。

 

転勤を拒否できると認められたケース

 

  • 退職させることが目的など理由が不当
  • 重度の病気や障害などの家族を介護する立場
  • 本人の病気が悪化する懸念がある

 

会社の意に沿わない従業員を退職させる目的の転勤や、重度の病気や障害など家族を介護する立場にある場合など、転勤の拒否が認められたケースがあります。

家族や育児中の子に重度の障害や病気があり場合が、企業の転勤命令が違法であると判断されています。

 

家族の介護_平成9年北海道コカ・コーラボトリング事件

平成9年に起きた一例です。

北海道の帯広で家族と暮らす男性は札幌への転勤命令を受けました。しかし、男性の長女は躁うつ病、次女は発達の遅れがありました。また、男性の両親は体が不自由で男性の介助が必要でした。これらを理由に男性は転勤を拒否しました。

裁判所は男性の家庭の状況を考えると、家族全員で札幌へ引っ越すことも、男性が1人で札幌へ行くことも難しいと判断。また、会社は他の従業員を転勤させることが出来たはずとして会社の転勤命令は不当だと判断しました。

参考文献:北海道コカ・コーラボトリング事件札幌地裁判決文

 

家族の介護_平成18年ネスレ日本事件

平成18に起きた一例です。

兵庫県の姫路で母と妻と暮らす男性は、茨城県の霞ヶ浦へ転勤命令を受けました。男性は老齢で徘徊壁のある母親と同居しており、昼間は男性の妻が、夜は男性自身が母親の介護をしていました。このため男性は転勤を拒否しました。

裁判所は男性が1人で霞ヶ浦へひっこると、妻が昼夜問わず母親の介護をすることになり、これは実際には無理だと認めました。また家族全員で引っ越すのも難しいと判断し、会社の転勤命令は不当だとしました。

参考文献:ネスレ日本事件大阪高等裁判所判決文

 

家族の介護_平成21年 東日本NTT事件

平成21年に起きた一例です。

北海道の苫小牧で働く男性が、東京への転勤命令を受けました。しかし彼は同じ苫小牧市内に住む両親の介護をしていました。父親は重い視力障害があり、母親は左膝に障害がありました。このため彼は転勤を拒否しました。

裁判所は男性が1人で東京に引っ越すと、妻が彼の両親の介護をする必要があり、それは難しいと認めました。

また、両親を連れて東京へ引っ越すのも困難だとして会社の転勤命令は不当だと判断しました。

参考文献:東日本NTT事件札幌高等裁判所判決文

 

本人の病気_平成21年NTT西日本事件

平成21年に起きた一例です。

糖尿病を患っている男性が、会社から新幹線通勤や引っ越しが必要な転勤命令を受けました。糖尿病の治療は規則正しい食事や運動が大切です。

裁判所は長時間の通勤が男性にストレスを与え、自宅での生活時間が減り規則正しい食事や運動が出来なくなると認めました。また、病院へ行くのも不便になると判断。

これらの理由から会社の転勤命令は不当だとしました。

参考文献:NTT西日本事件大阪高等裁判所判決文

転勤を拒否できないケース

  • 育児や単身赴任・親と同居など個人的理由

上記の場合は転勤を拒否できないのですが、具体的にはどのようなケースなのでしょうか。

裁判所の判決の基本的な考え方に、会社の規則で転勤命令がある場合、従業員は基本的に「家族と離れて暮らすことになる」「通勤時間が長くなる」「子育てが大変になる」という個人的な理由で転勤は拒否できないとされています。

従業員が転勤命令を拒否したことを理由とする解雇についても、正当な解雇理由であると認めた裁判例が多くなっています。

家庭の事情_昭和61年東亜ペイント事件

昭和61年の東亜ペイント事件は、日本の労働法で重要な判例です。
この事件では、東亜ペイントの従業員が会社から転勤命令を受けましたが家庭の事情などでこれを拒否しました。

会社は転勤拒否を理由に従業員を解雇しましたが、従業員は解雇は無効だと裁判を起こしたのです。

最高裁判所は、会社が規則に基づいて転勤命令を出す権利があると認めました。

そして従業員は家族と離れたり、通勤が長くなったり、子育てが大変になる等の理由で転勤を拒否することは基本的にできないとしました。

この判決は、会社の転勤命令と従業員の義務について基本的な考え方を示しており、労働法の実務で重要な基準となっています。

参考文献:東亜ペイント事件昭和61年7月14日最高裁判所判決

 

新婚早々の別居_平成4年川崎重工事件

平成4年の一例です。

従業員が兵庫県神戸市から岐阜への転勤を命じられました。しかし「新婚早々に単身赴任になるのは嫌だ」という理由で従業員は転勤を拒否しました。

会社は転勤を拒否したことを理由に従業員を解雇しました。
従業員はこれが不当だと訴えました。

裁判所は配偶者と一緒に引っ越すこともできると考え、転勤を拒否したことによる解雇は正当だと判断しました。

参考文献:川崎重工事件最高裁判所判決文

 

保育園への通園_平成12年ケンウッド事件

平成12年に起きた一例です。

育児中の女性の従業員が東京目黒区から八王子の転勤を命じられました。しかし、通勤時間が長くなり子どもを保育園に送迎できなくなると考え、転勤を拒否しました。

そのため会社は彼女を懲戒解雇しました。裁判所は八王子に引っ越せば子どもは八王子の保育園に通えるので、転勤命令に従う義務があると判断。よって、転勤命令に従わなかったための懲戒解雇も適法であると認めました。

参考文献:ケンウッド事件最高裁判所判決文

 

転勤を拒否できるかのまとめ

 

過去の実例とともに分かるのは、

就業規則などで会社の転勤命令権が定められている場合は
従業員が個人的理由で会社からの転勤命令を拒否することは原則として認められていない

との考え方があります。

例外として転勤を拒否できるのは、

  • 転勤を命じる業務上の必要性がない場合
  • 転勤命令が不当な目的な場合
  • 転勤による労働者の不利益が著しい場合

上記のケースに該当する場合です。

時代とともに、働く側の権利も守られ仕事への在り方も問われています。

転勤辞令は最終的に出るものなので、転勤への打診や待遇などの話し合いの段階で問題を解決できると良いでしょう。

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